既存建物を活用した建物被害調査研修

 2013年の災害対策基本法の一部改正によって、市町村には、災害の発生に備えて、り災証明書発行に必要な建物被害認定調査について、必要な経験や知識をもつ職員の育成などの措置を講ずるように求められています。また2016年熊本地震などなど近年発生した災害の教訓から、さまざまな自治体では、市役所近くでより実践的な建物被害認定調査の研修を多くの職員に受けさせたい、という要望があります。 常葉大学附属社会災害研究センターでは、2012年より災害による損傷をシミュレーションした実建物を使い、建物被害調査の研修会を開催しています。

福岡県北九州市

 福岡県北九州市では、同市所有の「北九州エコハウス(木造2階建)」を使用して、災害に係る住家の被害認定調査研修を実施した(2016年11月24-25日)。対象は北九州市職員と中心とした自治体職員約100名。この建物の建築図面を元に、地震時発生後の損傷状況をシミュレーションし、壁面にマスキングテープを貼り付け、ひび割れや剥落などの建物の損傷を模擬した。 被害調査研修では、従来の紙の図面と調査票を用いた方法とともに、建物被害調査アプリを使った調査方法も併用し、最後の検討会でその結果を比較した。また、北九州市では多くの職員が熊本地震において熊本市に派遣され、建物被害認定調査に従事した職員も研修に参加した。そこで、熊本地震における経験から、今後の北九州市の被害調査のあり方についても議論された。

奈良県(香芝市)

 奈良県では、香芝市下田学童保育所を使用して、住家の被害認定調査研修会を毎年開催している(2016年度は11月28-29日)。対象は奈良県全市町村の建物被害認定調査従事者(職員)約60名。この建物は鉄筋コンクリート造一階建であるが、これを木造一階建と仮定して地震時発生後の損傷状況をシミュレーションし、壁面にマスキングテープを貼り付け、ひび割れや剥落などの建物の損傷を模擬した。被害調査研修では、従来の紙の図面と調査票を用いた方法とともに、建物被害調査アプリを使った調査方法も併用し、最後の検討会でその結果を比較した。 損傷状況のリアリティは実被災建物にはかなわないが、建物内のすべての部位を調査し、損害割合を評価し、被災程度を判断するという、建物被害調査の一通りの手順を経験するとともに、今後の課題を検討した。

静岡県富士宮市

 静岡県富士宮市では、同市所有の旧料亭建物を使用して、建物被害認定調査研修会を開催している(2016年度は2017年1月24日)。対象は富士宮市職員約40名。この建物は鉄骨造二階建であるが、これを木造二階建と仮定して地震時発生後の損傷状況をシミュレーションし、壁面にマスキングテープを貼り付け、ひび割れや剥落などの建物の損傷を模擬した。被害調査研修では、従来の紙の図面と調査票を用いた方法とともに、建物被害調査アプリを使った調査方法も併用し、最後の検討会でその結果を比較した。